ふわもこメモ

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認知症の傾向と対策

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「昨日食べたものが思い出せない」「毎日探しものをしている」―これって認知症?と不安になるが、脳内がオーバーフロー状態になると認知症に似た症状が出るという。その一因となるのがスマホだ。

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8歳の男性Mさん。H医師の紹介状には「適応障害、不安障害、アルコール認知症の疑いがある。いわゆる若年性認知症ではないと思うが、認知機能の精査をお願いしたい」とあった。Mさんは2017年4月に勤務先の部署が変わってから仕事のミスが目立つようになり、昨年8月、不安感や焦燥感を訴えH医師を受診した。「抗不安薬の処方で症状は改善したが、Mさんは気分の落ち込みを訴えるように。毎日2合の日本酒も控え、週2日は休肝日にした。しばらくは経過観察と考えていたH医師だが、その元にMさんの職場の上司から要望が寄せられる。「Mさんは仕事のミスが多く、記憶力、判断力の著しい低下がある。若年性認知症ではないか。しかるべき専門医を受診させたい」「そこでH医師は職員情報報告書を同封し、脳機能の精査とセカンドオピニオンを求めた――というわけだ。この報告書には5項目の記載があった。
取引相手にファクス送信を約束しながら電話連絡で済ませ、「どうしてファクスしなかったのか」と聞かれ、「電話で連絡した」と答えた。の業務に必要な重要書類の一部をごみ箱に捨ててしまい、上司の注意に不思議な顔をして周囲を見回した。「上司から指示された業務をしない。4単純ミスが増え、曜日、品番、数量を間違える。6「平成」を「成」、「手指」を「種子」と入力したり、文章のブロック的な欠落や行単位の重複がある等々。
Mさんに「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDSR)(注)を実施した。0点満点で以点以上なら認知症でないと判断されるこのテストで、Mさんは満点を取った。次に脳波検査。脳の活動が活発な時に見られるアルファ波は、認知症患者にはほとんど、または全く見られないのが通常。ところが、Mさんは抗不安薬の影響でかなりの抑制はあったものの、アルファ波は活動しており、認知症とはいえなかった。脳の画像であるMRI(磁気共鳴画像化装置)検査でも、脳萎縮、認知症に特徴的な白質画像とも見られなかった。Mさんにこう説明した。「あなたは若年性認知症じゃない。仕事のストレスで脳機能が低下しているだけですよ」
そしてH医師には「認知症ではなく、高度の精神・心理的な圧迫・荷重による脳機能低下が起きており、オーバーフロー状態です」と返事をした。

脳が不安、不快、不満で満員電車になると

要するにMさんの脳は満員電車、状態だったということ。なぜMさんの脳は機能低下を起こしたのか。「人は非常に強いストレスを受けると、脳の中が不安、不信、不快、不満、怒りなどでいっぱいになり、寝ても覚めてもそのことが頭から抜けなくなる。それが満員電車状態なのです」極度の満員電車では乗客は身動きがとれず、電車から降りることもできないように、記憶や知識、正常な判断力や理解力すら取り出すことができなくなるという。乗ろうとしても入り込む余地がない満員電車のように新しい知識や記憶、新たな判断力、理解力を脳に取り込むこともできない。無限の容量・メモリーのパソコンがないのと同様、脳の容量には限りがあり個人差もある。Mさんの脳はいっぱいいっぱい、だったのだ。
加えて人間関係からくる不安や不快が重なる。「どうしよう、どうしよう」と思いながら脳は機能不全に陥り、物忘れがひどく、物も覚えられなくなるのだ。「書類を廃棄したり、忘れたりのミスは誰にも起こり得る。でも、Mさんは明らかに通常のミスではない。捨て方、間違え方、反応が正常ではなく、社会常識や生活常識から外れている。だから周囲は認知症かな、と思うわけです。でも経験を積んだ医師が診れば、認知症かどうかは概ね察しがつく。脳の状態は顔に出ますから」なかでも目元。認知症の場合は目元がしっかりしていないという。他にも認知症にはさまざまな付随症状があり、前述の長谷川式スケールや脳の働きを見る検査で確認することも不可欠だ。しかし現実は、Mさんのように認知症でもないのに若年性認知症の疑いをかけられたり、診断を受ける人がいる。「3年以上診療していてもちた若年性認知症は滅多に見たことがありません」実際、防歳以下で発症する若年性認知症の患者数は、約500万人とされる認知症全体の1%にも満たないといわれる。認知症そのものは病気ではなく、脳の疾患によって記憶や思考などに障害が起こった状態で、Mさんのようなオーバーフローによる認知機能の低下とは別物なのだ。「だが、昨年10~2月、若年性認知症をテーマにしたドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)が放映されるや、「もしや自分も?」と若年性認知症を疑い、受診する若い人が増えたという。背景にあるのは、やはりオーバーフローなのだ。

スマホで超オーバーフローに

最近「スマホ認知症」という言葉を聞く。「スマホ認知症は認知症ではなく、疑似認知症」。前述したような脳の疾患によって障害が起こった状態とは異なる。だが、スマホの使用で脳がオーバーフロー状態になることは否定しない。むしろ、スマホで超オーバーフローになると言うのだ。「スマホは便利な道具ですが、見ている時は脳の前頭前野の一部しか使われていない。その部分だけ集中的に脳の超オーバーフロー状態になり、他の場所は全くのガラ空きになるのです」
スマホ認知症とは、オーバーフロー認知症なのだ。また本来、音から脳に入る情報は膨大な量だが、スマホ使用中は熱中して音が聞こえなくなる。つまり、音の刺激がストップになり、非常にアンバランスな状態が続くわけだ。「長時間のスマホ使用を避けるのが脳のオーバーフローを避ける一つの方法です」総務省の『情報通信白書』(1年)によれば、スマホの保有率は8・9%。電車の中で、布団の中でついつい使う人、調べ物はすべてスマホという人は要注意だ。使用時間を制限する設定にしてもいい。
また、オーバーフローを招くストレスの背景にあるのが、過酷な労働環境である。経済協力開発機構(OECD)の7年調査によると、日本の平均年間労働時間は1710時間と先進国の中でも上位。労働基準法では1日8時間労働と定め
れているが、厚労省が昨年1月に実施した集中取り締まりでは、過労死の労災請求などのあった全国8494事業所のうち、2802事業所で違法な残業が見つかり、さらに868事業所では月100時間超の残業をしている労働者もいた。

改善の鍵はシーソーと甘い物

ならば脳のオーバーフロー状態を改善したり、予防することはできるのか。まずは休みをとり、スマホは使用し続けないことだが、シーソーゲームにたとえ、こう提案する。「シーソーの片方に嫌な重い荷物が乗っていて、片方が大きく浮き上がっているのがオーバーフロー状態です。悪い荷物を叩き落とせばシーソーは簡単に水平に戻る。つまり、ストレス源となる上司や同僚がいなくなることですが、実際には難しいですよね。だから、反対側に荷物を積み込み、水平にすればいい。何か『楽しい荷物』を載せることなんです」だが、前出のMさんのような患者は、大抵「楽しいことなんて何もない」と尻込みするという。勧めるのは、甘いものを口に入れること。数年前に米国で、甘いものを食べた時の脳の画像を見ると、覚醒剤を打って高揚した脳の画像とそっくりだったという。「脳はもともと甘いものが好き。脳の栄養源はブドウ糖(グルコース)で、食物から入る糖分の6割は脳で消費されています。高齢になると脳は老化して機能が落ちてきますが、老化した脳は自分で衰えを感知し、甘いものを求める傾向にあるのです」
老人介護施設の見舞いや往診に出かける際、白衣のポケットに飴を入れていく。「飴をどうぞ」と差し出すと、断る人はいないそうだ。さらに「スポーツ脳」「芸「術脳」もシーソーを元に戻「す力が強いという。・スポーツの類いで一番手軽なのは、ちょっと早足で歩くこと。これで脳の機能はかなりバランスを回復する。もちろん芸術も、心の住み家である脳を癒やしてくれる。「自然に親しむのも芸術の一種で、遠くの温泉や海まで行かなくとも、頭上の空、夜空、雲の様子などを眺めるだけでもいいのです。職場の人間関係に悩み、パワパラに遭っても、大自然の中に身を置くだけで脳の状況はよくなります」
もちろんスマホをを持たずに「デジタル・デトックス」が理想だ。
カラオケなどの音楽も脳にはいい影響を与える。歌ったり演奏する時は仕事や他のことを考えない。踊りも同様で、もともと阿波踊りや各地の盆踊りは「庶民の不満の緩和策として推奨された。踊ることでシーソーのバランスが取れていくのだ。

真性の認知症にはバラの香りを

ところで前述したような疑似認知症ではなく、本物の認知症になったら。5年には高齢者の約5人に「1人が認知症になるとみられるが、症状を抑え、進行速度を鈍らせる薬や工夫はあっても、決定的治療法はない。バラの香りが真性認知症の予防、緩和の一助になることを突き止めた。「脳の中で衰え出す場所には順番があります。最初が側頭葉の『扁桃体』(アミグダラ)と呼ばれる喜怒哀楽や情動の中枢。ここには匂いを感じる嗅覚が入っている。匂い情報を整理している嗅皮質です。また、嗅覚は味覚とも密接に関係しており、扁桃体のすぐ近くには記憶中枢の海馬があります」「認知症の始まりとされる物忘れの前に「匂いがよく分からない」と訴える患者は少なくない。動物は嗅覚で食物や異性をドキャッチしているが、高齢になって嗅覚が衰えるのは、次世代へのバトンタッチの意味もあるだろう。扁桃体が衰えると、香りを感じにくくなる。だが、逆に毎日、花の香りを楽しむ生活をすれば扁桃体を活性化できるという。「最も効果のあるバラはA種類もの匂い物質が混じり合っており、脳に非常に複雑な刺激を与える。匂いは感情とともに記憶されるので、過去の記憶を呼び戻すことも多い。脳が喜ぶ香りや味が脳を刺激するのです。散歩途中や庭の花が最高だが、買ってきた切り花でもよいし、香水でも代用できます」「それ以外にも認知症予防の具体策として、1日2時間の会話をすること、積極的に掃除することを勧める。掃除は、精神力、判断力、集中力などを高める効果があるからだ。一方、いい香りでリラックスすれば、ストレスも軽減し、オーバーフローが改善するかもしれない。右ページ上のテストで7点以下なら基本的には心配ないが、7点以下でも「認知症ではないか」と不安になる人は脳がオーバーフロー状態か、スマホ依存の可能性がある。まずは生活のクセを見直すことが肝要だ。

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